お庭の思い出物語

 

私は庭師の仕事をしております。

職業柄、お客さん(おじいちゃん、おばあちゃん)とお話をする機会が多くあり、

楽しい話、苦労した話、庭に関する思い出など、皆さんひとりひとりにいい物語があります。

そこで、その物語を1000文字程度でご紹介してみたいと思います。

 

 

合わせて読みたい記事

お庭の思い出物語

 

 

第2話  Nさん

 

「休憩してくださいな」

私は庭師の仕事をしており

休憩時間になると飲み物などが出てくることがあるのだ

 

「この街もすっかり変わってしまった」

そうお話してくれるのは90歳を迎えたおばあちゃん

 

「今はカローラ(車屋)さんやフレスタ(スーパー)さんにコンビニさん、銀行さん、病院さんなんでもあるんだよ」

可愛らしいそのおばあちゃんは

何にでも「さん」をつけるのが口癖のようだ

 

「昔はポツポツと家があって、田んぼと畑だけだったんだよ」

そう話すおばあちゃんは

とても嬉しそう

 

独り暮らしのおばあちゃんは

たまに帰ってくる娘さん

息子さんたちを楽しみに待っている

 

やはり独り暮らしはどこか淋しいらしく

話し相手が欲しいみたいだ

 

「昔は郵便局に勤めていたんだよ」

お父さんと二人

一生懸命子供のために働いてきたおばあちゃん

何とも言えない力強さを感じる

 

「私は昔、お父さんと貯めたお金で勝手にビルを建てたの」

広い畑や田んぼの管理がとても大変で

苦労をしていたという

 

そんな時に

住宅営業マンがビルの計画を提案してくれたのだ

お話好きのおばあちゃんはすっかりと意気投合し

お父さんに相談したのだった

 

「やっぱりお父さんには反対されたの」

保守的なお父さんは

今のままでいいと反対したのだった

 

「私は諦めきれなくて、内緒で判子をおしたわ」

おばあちゃんはとても積極的で

怖いもの知らずの性格なのだ

 

だんだんとビルが形になっていき

おばあちゃんはワクワクしていたそうだ

 

「土地を貸してビルを建てたことがうまくいったの」

広い畑の管理も少なくなったほか

多くのお金を手に入れることができたのだ

時間的にも、金銭的にも豊かになったのだ

 

「それから、どんどん土地を売ったり貸したりしていったの」

そんなおばあちゃんの姿に

最初は反対していたお父さんも諦め

好きにさせてくれたのだった

 

おばあちゃんは

その地域がどんどん豊かになる姿を

楽しみに見守っていた

 

結果として

地域の大地主となり

立派なお屋敷を建てることができたのだった

 

「お父さんは私の突拍子のない行動力に驚いていたけど、感謝してくれたの」

やはり、それほどの財を築けたのは

紛れもなくおばあちゃんのおかげなのだ

 

行動力と決断力

 

おばあちゃんにはかなわないのである

 

休憩時間におばあちゃんの昔話を聞きながら

30分が経過していたことに気付いた

 

私「そろそろ庭仕事をしないといけないので、ご馳走さまでした」

そう断りを入れて

席をたつと

 

「コンビニさんにはなんでも揃っているからたすかるわよねぇ」

お話好きなおばあちゃんのトークは終わらない

 

相変わらず

「さん」をつける口癖が気になる私であった

 

スポンサードリンク

「思い出の庭木を小さな盆栽に」

投稿一覧